研究内容

ソフトウェア開発プロセスとは、ソフトウェアの開発過程のことである。これ を改善することにより、ソフトウェア開発の効率をあげようとするのが、ソフ トウェア開発プロセスに関する研究である。いわゆるBPR(Business Process Reengineering)のソフトウェア開発過程版である。

例えば、ある忙しい受験生がいるとする。彼は一日に何時間も勉強している。 おそらく6時間は勉強しているのではないか。参考書も、一日に何十ページも 進んでいる。しかし、思ったより成績が上がらない。なぜだろうか?

彼が勉強の効率をあげたいと考えた。どうしていいか分からなかったが、とり あえず、何時から何時まで微積分をやった、何時から何時まで英語をやった、 何時から何時までは息抜きとしておかしを食べた、何時から何時までお風呂に 入った…というように、自分の行動の時間記録をとりだした、しかも分単位で 細かく。そして、その時間で参考書がどれだけ進んだか、ページ数を記録する ことにした。

すると、今まで一日に6時間は勉強しているように思っていたのが、実は平均 で4時間半であることが分かった。思ったより息抜きの時間が長いのだ。また、 参考書は一日に何十ページ進んでいるように思われていたが、このまえやった ページをもう一度復習したりするので、実際には平均で9ページしか進んでい なかったことが分かった。つまり、自分が思っていた程には勉強していなかっ たのである。

彼は勉強の改善に乗り出した。まず、息抜きをいい加減にとらず、時間を3分と 決めた。夕食とお風呂で3時間近くも消費していた(何をしていたのか不明だ が、だらだらとしていたのだろう)ので、てきぱきと行動することで勉強の時 間を新たに1時間半生み出した。また一日の勉強の進度(ここでは参考書のペー ジ数とする)が正確に分かったので、テストの日までにどれだけ出来そうか、 すべて出来ないのならどれからやらなければいけないか、という詳細な計画が 立つようになった。今日はどれだけ勉強が進んだかという記録をつけているの で、計画通りに進まない時でも、計画の変更がデータを基にして戦略的に行え るようになった。

彼が行ったのは、勉強のプロセスの改善である。勉強のプロセスを何らかの方 法で記述し(この場合は時間に着目して記述した)、各種データを記録し(参 考書が何ページ進んだかを記録した)、それらを評価することによって勉強の プロセスを改善することに成功した。また、データに基づいた計画を立てるこ とが出来るようになった。

同じようなことを、ソフトウェアの開発過程において行うのがソフトウェア開 発プロセス(以下プロセス)に関する研究である。プロセスを何らかの方法で 形式的に記述し、各種データを集め、それらを評価し改善策を考える。

僕の研究は、プロセスの新しい記述方法の提案と、各種データを自動的に収集 するためのソフトウェア開発環境を構築することである。今までの研究はプロ セスを作業の手順に着目して記述していたが、当研究では作業の結果作り出さ れるプロダクト(ソースコードや仕様書など)に着目して記述する。また、あ らかじめ定められた開発環境で限られたツールを使用しなければデータを自動 的に収集するのが難しかったが、そういう制限をなるべくなくし、開発作業者 が今まで使っていた環境を替えることなく必要なデータを自動的に収集するこ とを研究している。


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Last modified 5/23/1997
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